8月6日（日）、「ビルダーズノート」クローズドβテスト参加者を対象とした塗装セミナーが、オンライン上で開催されました。今回はビルダーの七式ガンプラ部さんが講師となり、キャンディ塗装について解説をいただいています。
※このレポートで掲載された製品の写真、あるいはテキストには、コラボやプロモーションの意図は含んでいません。
【講師紹介】
七式ガンプラ部さんは、キャンディ塗装を得意にされているビルダーさんです。独特の光沢感と透明感を持つ、深みのある色ツヤの写真を撮影・投稿されています。
七式ガンプラ部さん「光沢塗装の仕上げには必ず研磨が入ります。ですが今日は時間の関係で最後まではできないので、研磨以外の部分でお伝えできる、今の自分の最高のクリア塗装をお見せしていきたいと思います」
今回のセミナーでは、七式ガンプラ部さんに手元カメラをご用意いただき、そちらの映像も交えながらの進行となっています。
【キャンディ塗装とは何か？】
七式ガンプラ部さん「ベースになるメタリック塗料の下地に対して、カラークリアを吹きつける塗装のことを、キャンディ塗装と言います」
七式ガンプラ部さん「海外では日本と比べて派手な塗装が好まれるので、バイクなどに派手派手しい塗装を施すために生まれた技法です」
一般的なキャンディ塗装では、ベースになるシルバーの時点でベタ塗りをするのが基本だそうです。
この点で七式ガンプラ部さんの場合は、下地の段階でシルバーと黒色のグラデーションを作っているとのことでした。
七式ガンプラ部さん「濃淡を後付けするやり方もありますが、七式は下地の段階でやります。こうするとカラークリアを吹きつけるだけで、グラデーションができますから」
キャンディ塗装は名前の通り、飴玉のような光沢を表現するためのものです。基本は光沢塗装がセットになりますが、最近ではツヤ消し仕上げにした、潰しキャンディという技もあるとのこと。
【下処理について】
七式ガンプラ部さん「足付け（塗料の食いつきを良くするためのヤスリがけ）は、400番の粗さから始めて、1000番まで。その後は洗浄と乾燥をしてからサーフェイサーを吹きます」
ヤスリ、サーフェイサー共に、番手が大きいほど目が細かくなります。足付けを1000番までやるなら、サーフェイサーも1000番に合わせた方が安定するそうですが、必ずしも1000番にしなくてもいいそうです。
七式ガンプラ部さん「サーフェイサーの次は黒ですが、これは真っ黒に塗りつぶすだけです。この下地作りが終わったらシルバー立ち上げ、カラークリア、クリアと進めていきます」
黒とシルバーの部分は立ち上げ塗装。いわゆるMAX塗りに近いものとなります。面の中央から外側に向けて吹き付けていくところも、MAX塗りと同じですね。
七式ガンプラ部さん「立ち上げ塗装の際には、できるだけ粒子が細かい塗料を使うのがいいですね。粒子が大きいメタリック片が入った塗料を使うと、エアブラシが詰まりますから」
普通は立ち上げ塗装の際に、0.2mmなどの細いエアブラシを使うはずですが、今回使用するのは0.3mmのトリガーです。粒子が粗いので、詰まらないようにやや太めにしてあるとのことでした。
また、塗料の選択肢はガイアノーツ「Ex-07 Ex-シルバー」か、Mr.カラー「H-8シルバー（銀）」のどちらかになるそうです。今回のセミナーでも上記のExシルバーを、レベリングシンナーで３倍に希釈したものを使っていきます。
こうした一通りの概要説明が終わると、次は実際に作業をしながらの解説に入りました。
【塗装のポイント】
七式ガンプラ部さん「まずはエア圧と塗料を目一杯に絞ります。塗料が出るか出ないかのギリギリで吹き付けて、エアブラシが詰まらないか確認します。詰まっていた場合は、エア圧を上げて対処してください」
七式ガンプラ部さんは0.04～0.05メガパスカルのエア圧で作業をしていますが、これは低圧のコンプレッサーをお使いの方からすると、少し圧が高めに感じると思うとのこと。
七式ガンプラ部さん「個人的には、黒と銀の濃淡を分かりやすくした方が、完成品の見栄えがよくなります。一度塗ってみるとこんな感じですね」
塗料はすぐに乾くので、明るさや暗さは、重ね塗りをする過程で調整していきます。
４回くらい繰り返して、黒の部分をだんだん狭めていきますが、シルバーの部分にも濃淡がつくように調整すると、下の写真のような仕上がりになるそうです。
七式ガンプラ部さん「部品の大きさが違っても、同じ濃淡にするところがゴールです。僕もMAX塗りはあまり得意ではないので、まだ修行中ですね」
【Q＆Aコーナー】
カラークリアを吹く前に、エアブラシの清掃作業が入ります。そして掃除をしている間に、参加者からの質問を募るQ＆Aコーナーが始まりました。
Q.立ち上げをすると塗りムラが気になるのですが、確認はどうされていますか？
A.まずは全パーツを塗装して、時間を空けてから一つ一つ確認していきます。最終的に色を揃えていけばいいので、よりよい光の下で見るのがいいですね。高演色（太陽光に近い色）を当ててあげるのがいいと思います。
Q.塗装ブースは何を使っていますか？
A.自作にして、缶スプレーが吸えるレベルの吸引力にしています。厨房や工場の換気などで使われている、大型のファンを取り付けてあげれば、音量を抑えながら吸えます。
缶スプレーはエアブラシよりもかなり圧が高いため、七式ガンプラ部さんは市販ブースの吸引力に満足できずに、自作を始めたそうです。
Q.クリア塗料を吹き付ける際に、色ムラが出ないコツはありますか？
A.手の動かし方を円ではなく左右にして、スプレー缶と同じ吹き方を意識してください。
A.クリア塗料を吹き付けるときに、色の差が出ないコツはありますか？
Q.まず１回あたりの噴霧を同じ量にします。それから塗装範囲の重なりを最小限にして、吹き付けを１往復で終わらせる。これを繰り返せば均一になると思います。
この点に付随してワンポイント。塗料を吹き付ける際の裏技が紹介されました。
七式ガンプラ部さん「カラークリアをクリアで薄めて、発色しにくい状態にしておくと失敗が分かりにくくなります。クリアの方が柔らかいので、塗膜が少し綺麗にもなります」
シンナーで薄めると液垂れするので、クリアで薄めるのがポイントとのことでした。
【カラークリアで塗装】
光沢塗りを始める前に、静電気除去ブラシで吹いてから、エアブロウで埃を飛ばしていきます。これらの下準備を終えてから、エアブラシのエア圧は0.08メガパスカルにセットして、また塗料を吹いていきます。
七式ガンプラ部さん「ここからはクリアレッドとクリアを１：１で割ったものを、シンナーで2.2倍希釈にした塗料を使います」
七式ガンプラ部さん「クリア塗料は重なるほど濃くなるので、距離と範囲を固定して、重ね塗りしていきます」
Q.下地に金色は使えますか？
A.もちろん使います。キャンディレッド、オレンジ、イエロー辺りに使いますね。金と銀で完成時の色が若干違います。
しかし塗装を重ねるほど透過率が下がっていくので、違いが分かるのは薄塗りの場合だけとのこと。最終的には色合いが似てきますし、展示会で金の下地と、銀の下地の両方を見せても、どちらが金の下地か当てられた人はごく少数とのことでした。
Q.光沢塗装をするときに、おすすめのシンナーってありますか？
A.強い溶剤は食いつきがいいですが、下地を溶かしてしまいます。キャンディ塗装の場合は下地の塗膜が溶けると色が濁ってしまうので、通常のうすめ液を使いましょう。
今回のセミナーで、七式ガンプラ部さんが使用していたのはT-06 ブラシマスターというシンナーです。これは安価なところが魅力とのこと。
【七式キャンディの特徴】
七式ガンプラ部さん「塗料を吹いた直後は光沢が見えますが、乾くとこの光沢感はなくなります。個人的に、この状態では光沢塗装とは言えないと思うんです」
七式ガンプラ部さん「ラッカークリアの場合は、クリアの塗膜の厚みが光沢に直結します。画面越しだと伝わりにくいかもしれませんが、２回３回と重ねていくと、もっと差が出ますね」
ウレタン塗料の場合は１回の塗装で、ラッカークリア３、４回分くらいの塗膜が作れるので、一発で塗装が終わることもあるそうです。しかしラッカー塗料でツヤを出そうと思うと、どうしても厚塗りが必要になるとのことでした。
七式ガンプラ部さん「我々の世代のイメージだと、ガンプラを塗装するときの塗膜は、薄く薄くを意識していたと思うんです。でも光沢を出すことを考える場合は、厚く厚くです」
ラッカークリアを使用する場合で、エッジが消えるのが気になる場合は、重ね塗りを３回目くらいまでに留めるのがいいそうです。厚塗りをするごとにパーツのエッジは消えるので、どこまで許容できるかが問題とのことでした。
また、使うクリアは時々によって変えるそうですが、最近では塗膜を保護するために、クレオスの「Mr.カラーGX スーパークリアーⅢ UVカット 光沢」を使う機会が多いそうです。
クリアによって使用感やクセが変わるので、慣れるまでは１種類に絞るのがおススメとも仰っていました。
【クリアの吹き付け】
七式ガンプラ部さん「クリアは0.04mmのエアブラシで、0.09メガパスカルの空気圧にして塗っていきます。先ほどまでと比べると、明らかに噴霧量が増えますね」
七式ガンプラ部さん「足りない場所には追加で塗りますが、塗りがゆっくり過ぎると垂れてきます。トリガーを握る強さを少し変えるだけで、噴霧量も変わってきます。やりにくい作業ですが、ここは慣れです」
これを繰り返して、ザラついた部分が無くなれば完成となります。ラッカー塗料では垂れる寸前が一番光沢を出せるので、最初に試すときは一度、垂れる限界の薄さを確かめるのがよいそうです。
七式ガンプラ部さん「先ほどのUVカットクリアはシンナーで割りますが、２倍～２．５倍希釈が目安です。例えば今回のセミナーでは、2.4倍希釈のものを噴霧していました」
Q.希釈は厳密に図りますか？
A.慣れれば塗り方で調整可能なので、大雑把にやっていますね。どうしても上手く塗れないときだけ計量しています。
【光沢塗装の裏技】
七式ガンプラ部さん「僕が光沢塗装を覚えたのは、仕事で必要だったからなんです。今は仕事ではやっていませんが、光沢塗装は26年続けています。それでもまだまだ修行中なので、すごく難しい技術ではありますが、簡単にできる方法もあります」
具体的には、塗膜が完全に乾いた段階で、研磨をするとよいそうです。コンパウンドで磨いて研ぎあげると、ゆず肌（塗装の飛沫が飛んでザラザラした部分）は消えるとのこと。
七式ガンプラ部さんの場合は、ドリルの先にポリッシャーを付けて電動で磨き、柔らかい布でワックスがけをして仕上げているそうです。手作業の10倍速で仕上がる代わりにエッジが消えるとのことなので、気になる方は手作業で！
七式ガンプラ部さん「クリアを吹くところまでは「光沢塗装をやりました」であって、研磨までやって初めて、「光沢塗装で仕上げた」と言える。それが僕の師匠の口癖ですね」
また、高圧力が出せる置き型のコンプレッサーを使える場合は、ウレタン塗料を使った方が難易度は下がるそうです。ただし充電式コンプレッサーでは、極端に薄めたもの以外は使えないので、その点はご注意を。
【パール塗装】
七式ガンプラ部さん「こちらはメタリックの代わりに、偏光パールを下地に使っています。ガンダムの立ち上げ塗装と同じ感じで始めて、その上から偏光パールをベシャッと塗ると、こうなります」
Q.偏光パールの塗料には何を使っていますか？
A.100均に置いてあるネイル用のパールを、クリアで溶いたものです。黒の部分にだけパールの色味が出て、白の部分は光が当たらなければ、白のままに見えます。
これをやっている人は、自分以外では見たことがないとのこと。ネイルグッズをガンプラに転用するという発想も、熟練者が試行錯誤した結果なのかもしれません。
【セミナーを終えて】
今回のセミナーでは塗装のプロから、本格的な内容をご教示いただきました。手慣れが重要になる技術ではありましたが、マスターすれば特別な色合いのガンプラを作れるようになりそうですね。
セミナーで紹介されたキャンディ塗装を実践してみた方は、「#キャンディ塗装セミナー」、「#アドバイス実践してみた」のタグを付けて、ぜひビルダーズノートにご投稿ください！
また、ビルダーズノートでは今後もイベントを企画していますので、今回のレポートで興味を持たれた方も、次の機会に参加してみてはいかがでしょうか？
イベントへの感想や、「こんなイベントがあったら参加してみたい！」などのご要望もお待ちしておりますので、この記事のコメント欄に、ご意見をお寄せいただけると嬉しいです。よろしくお願いします！
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Mr.カラー　H-8シルバー（銀）（©2019 GSI Creos Hobby Dept.）　
Mr.カラーGX スーパークリアーⅢ UVカット 光沢（©2019 GSI Creos Hobby Dept.）
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